オオスズメバチ襲来

Essay

実家の近くにオオスズメバチの巣ができたことがある。

夏のある日、網戸にぶーんぶーんとホバリングしながら奴らはこちらの様子を伺いにきていた。最初はクマンバチかなと気にもかけていないでいた。しかしよくよく見ると大きさが掌サイズのスズメバチで今にも攻撃を仕掛けるぞという勢いが見て取れた。

こいつぁあ、やばいかもしれない。

窓から外の様子を見てみると少し先にある枯れたスギの上を、何匹ものオオスズメバチがつたのような植物から生えた花の蜜を集めていた。

異変は他にもあり、自宅の周辺にも10匹ほどのそいつらが飛んでいた。幸いなこととにこちらに敵意はなさそうである。理由はわからないが、おそらくこちらから仕掛けない限りは攻撃してこないようだった。強者の余裕というものなのかもしれない。

奴らの生態は朝に巣から出て夕方に帰ってくるというスタイル。社畜のように勤勉だ。

観察の結果、枯れスギの場所から斜め下に向けて急降下していく様子がわかった。その辺りを見てみると、別の枯れ木の股からひょっこりと顔を出している数匹のやつらがいた。

ぜーんぜん可愛くない。

オオスズメバチは数十キロ四方を餌取りに向かえ、毒性もかなり強力で、存在自体スズメバチの中で最強の位置にいる存在である。

このまま放置しておくわけにはいかない。

さっそく業者に駆除依頼を頼んだ。業者によると、ここ数年蜂の巣が出来上がることが多いらしい。ひょっとしたら地球の気候変動の影響なのかもしれない。

やってきた業者は全員で四名。対応は手慣れたもので、全身を覆う白い防護服を着て、見張り役がいる中、巣穴を見つけて、そこに殺虫剤らしきものを注入していった。

小さい頃は全く見たことのない光景が自宅近くで繰り広げられている。時間がどれくらいかかるのか分からなかったので僕は作業に戻った。

しばらくして業者の方がバケツの中に入れた巣を笑顔で見せにこられた。層状になっている巣にはいくつもの卵があり幼虫もいて、かなりエグい絵面だった。

うん、見たくなかったかな。

料金は2万円前後くらいだったと思う。オオスズメバチともなると命がけなので、それが彼らのわりに合っているのかわからない。とにかくこちらとしては、巣が駆除されたことで何よりだった。

ときどきブーンと大きな羽音が聞こえるとびくりとする。しかしそれがクマンバチだったら特に驚かない。クマンバチは穏やかな性格で、人を襲うことは少ないそうだ。なんなら全身毛むくじゃらでどこかしら愛嬌があるくらいだ。

君とは友達になれそうだ。

クマンバチは家の軒先の柱に止まって、うれしそうにゴリゴリと巣を作りはじめていた。

僕はため息をついたあと布団叩き手にとった。

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